ユーコさん勝手におしゃべり

4月20日
 気候がどんどん上向いてきた。晴れた朝は、荒川土手にテントウムシを採りに行っている。
 すっきり草刈りされた後や消毒のゆきとどいた公園にはいないので、ちょっと丈の伸びた草むらに目を凝らす。
 最初、「今日はいないな」と思う。眺めているうちに次第に鳥の目虫の目になっていき、どんどん見えてくる。持参したガーゼの採集袋には、成虫、幼虫、さなぎが入りにぎやかになった。大事に持ち帰って小庭に放す。
 かくして、春先うちの小庭のアイビーについたアブラムシは、ほぼ見えなくなった。
 かわいい働きものに感謝。これからもよろしく。

4月10日
 シャボン玉
  さくらの花びら
   鳥の羽
軽きもの三種。
 先日の休みに千葉一宮へ温泉旅に行った。海沿いのホテルから遊歩道を通って砂浜に出る。松苗育成中の囲いの横を通ると、目の前数メートル先で鳥が慌てて飛び立った。オスのキジだ。
 そのあとしばらくしてメスのキジが三羽のろりと飛び立った。オスは藪の中でケーンケンと鳴いた。
 浜辺を歩いて帰り道、またオスのキジに出会った。藪に焦って逃げ込むオスと、ゆったり歩き去るメスたち。どうやらキジはメスのほうが肝が据わっているらしい。
 どこへ行っても桜の木があり、旅の途中は自然と花見物になる。
 帰路、アクアラインで東京湾を渡り、横浜の江川せせらぎ緑道のチューリップと桜を見て帰ろうということになった。すると店主は木更津うまくたの道の駅で草餅を購入。花見に団子はセットということらしい。
 この間読んだ朝井まかての「先生のお庭番」にも、稲佐山の薬草園でシーボルト先生が、
 「やぱんの花好きには驚かされる。…(薬草園の)生垣越しに紫陽花ば見物して、弁当を遣う者までいるんだ。」
 と呆れ半分に感心する場面があった。
 気持ちのいい花と弁当は、説明のいらない自然な反応だ。
 疑いもなくなされることがらを、文化っていうんだな。

4月6日
 ツバメが来た。堀切にツバメが来た。
 それだけで、心がはずむ。
 店から駅前の信号をひとつ渡って、郵便局へ行く。変哲もないルーティンの帰り道、信号を待っていると天から
 「チュルチュルチュル…」
と高い声がする。見上げると、電線に一羽、ツバメがとまっている。
 青になって急いで信号を渡り、駅舎の高架下を見れば、去年と同じ巣にもう一羽ツバメが来ている。
 この喜びを早く誰かに伝えたい。
 努めてふつうに歩いて店に戻ったけれど、心の足はスキップを踏んでいた。

4月4日
 花が咲く。どんどん咲きだす。昨日までなかったところに新顔の花が開いている。
 いったん春の日差しを浴びて育った花芽は冷たい雨の中でもキチンと咲き、毎日続々と増えてゆく。
 3月下旬の好天に誘われ、自転車に乗って堀切橋と汐入大橋を渡り、連日隅田川沿いの大寒桜並木で花見弁当を開いた。
 「次は染井吉野だね」と言った通り、花は開きだしたものの、花見どころではない寒波がやってきた。
 春の次は夏だと思ってたけど、春の次は冬だった。
 冬眠から覚め、外で日向ぼっこを楽しんでいた飼いカメも家の中に避難してきた。
 ガスファンヒーターの場所を覚えて、スイッチが入ると温風の吹き出すところに陣どって動かない。カメにとってヒーターはどこでもドアのようだ。温風の来る吹き出し口の向こうの国へ行きたくて、懸命に手を伸ばし顔を向けるが、どしてもここから中に抜けられない。目が乾くのでしきりに手で顔をさすり、ファンヒーターの後ろにも回ってみるが、後ろは寒い。
 そのうち温風吹き出し口におしりを向けて居座ることを覚え、昨夜はそうしてあたたまっていた。
 夜も更け、ファンヒーターのスイッチを切ると、しばらくして自分のふとんに這いより、もぐりこんでゆく。
 そんな日々もようやく終わり、今朝は久しぶりにまぶしいお日様を見た。
 カメを外に出すと、お散歩中の保育園児たちが次々とカメにあいさつしてゆく。
 店を開ける前、お弁当を買って近所の公園の染井吉野の下へ行き、帰ってきた春を楽しんだ。
 

3月のユーコさん勝手におしゃべり
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