ユーコさん勝手におしゃべり

3月14日
 春が来た。
 カメ起きた。
 2・3日前「カメ冬眠中。今週末ごろ起きます」と書いた紙をカメの冬眠用バケツの上に貼って、日の当たるところに移動させた。その時一度バケツのふたを開けて、落葉の布団をかき分け、泥の中のカメの消息を確認した。
 ちょっとだけ動く気配があったが、起きてくる意欲はまだ見られなかった。
 安定した晴れが続く予報が出た今朝、カメを冬眠から起こすことにした。手袋をはめて泥の中からカメを持ち上げる。
真っ黒で泥団子みたいな頭からプクッと息の出るの音がして、鼻のところに二つの小さな穴があく。
 ちょうどカメと知り合いの幼稚園児の女の子とパパが通りかかって、カメとの再会を喜んだ。
 シャワーの水をかけて洗ってやると、薄目を開け、手足を出す。パパがスマホで、目覚めたばかりのカメと女の子の写真を撮った。
 「ママに見せてあげるんだ。ママは今日は歯医者さんなの。」 と女の子が楽しそうに言った。
 12月から3ヶ月半カメが眠っていた45Lポリバケツから、ぬれ落ち葉を取って水を捨て、黒土をこねた泥んこを紙の上に広げて干した。
 冬眠中のカメはほぼ仮死状態なので、毎春、産声をあげるようにさいしょの息をする。「今、生まれた」という新鮮さを毎年みせてくれるのだ。でもそんな時間は年々減ってきている。
 たまごを産むようになる前までは、毎春、「はじめまして」というように飼い主を見つめ、場所を確かめていた。
 近年は、数分で「勝手知ったる人と場所だ」と認識してすぐにリラックスする。
 カメのプールも新調してひとまわり大きなものにしたけれど、へっちゃらで泳いでいた。
 夕方前に気温も低くなったので家に入れると、一回り探検して、迷うことなく自分のお気に入りの寝袋に入っていった。
 もう31歳だもんな…、と感慨深く、今年も飼いカメとの暮らしが始まった。

3月9日
 先週末から季節をくつがえす風が吹いている。
 ようやく春めいてきた3月初旬、「カメさんはまだ出てこないのか」と尋ねる人が増えてきた。
 「チューリップのつぼみがつくころ冬眠から目覚めます」と答えている目安のチューリップのつぼみもふくらんでいる。
 しかし冬眠バケツのふたを開ける予定当日に強い北風がやってきて季節は冬に逆戻りしてしまった。今週一週間は寒気が居座る予報である。
 飼いカメを起こすのはもうちょっと先になった。
 こんな気温でも土の中では春が進んでいる。数日前にクロッカスのさいしょのつぼみを見つけたのだ。
 濃い紫色のそれは、地面に近く目立たなかったので、見つけた瞬間、そばの枯葉を取ろうとした不用意な私の指がつぼみの真下の茎を折ってしまった。
 咲く直前までふくらんだのにぐったり下を向いたつぼみに慌てふためき、割り箸で添え木をしてみたけれどうまくいかなかった。落ち込みはまだ続いている。
 早く次のクロッカスが咲いて、私の罪の意識を帳消しにしてくれますように。
 

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